雫井脩介 「犯人に告ぐ」

2004年文春ミステリー　第1位。
このミス2005年度版　　第8位。

メディアを利用し犯人に訴えかけていく「劇場型捜査」を柱に、警察内部の軋轢やマスメディアの思惑、被害者家族の感情を描いた警察小説です。



派手なエンターティメント性よりも、人間関係や人の内面に深く切り込んでいくのを得意とする雫井氏らしい作品で、主人公に感情移入させ物語に引き込む巧さはさすがでした。
ただ、このボリュームと「犯人に告ぐ」という挑戦的なタイトルにしては、内容がおとなしく盛り上がりに欠けるなという印象は否めません。
捜査の中心に立つ巻島と犯人とのやりとりが、徐々に近距離の緊迫したものになっていき、ヒリヒリとした展開になっていくのを期待していたのですけど・・・。

まあ、私の勝手な期待に添わないからといって「ダメ」ってことではないです、もちろん。
先が気になって一気読みでしたから。次作も楽しみです。