乙一 「ＺＯＯ」

これは10編の短編集で、どの作品も「死」が題材になっており、乙一ワールド全開です。
すごくシビアに恐怖を煽る物もあれば、コメディタッチの作品もあり、さらにファンタジー？ＳＦ？童話？と思わせる作品も収録されています。
ジャンル分けするならやっぱりホラーでしょうね。
10作品それぞれテイストは違っても、人という生き物の得体の知れない残虐性が描かれていて、単純に怖かったです。



乙一氏の小説の怖さは、普通なら何か理由があるであろう暴力や仕打ちに対して何の説明も無く、たんたんと物語を進めるところにあるような気がします。
こんな残酷なことが現実に起こるわけないとか、トリックがあるはずだとか、精神的な均衡を保とうとして何かしらの救いを期待する読者に対し、救いの手となるような結末は書いてくれないのです。

今回、特に怖いと思ったのは「冷たい森の白い家」「ＳＥＶＥＮ ＲＯＯＭＳ」の2作品。
私はこの2作品を読んだ後、底知れぬ恐怖と強烈なストレスで、しばし呆然としてしまいました。

「ＧＯＨＴ」はミステリーの要素がかなり入っていたこともあり、すごく面白いと感じましたが、「ＺＯＯ」はまったく別物で私にはちょっとキツかったです。
ホラーが苦手な方（私じゃん！）にはお薦めできないですね。